関西、日本における独自の「自主制作本」を作ってきた歴史があり、それをしっかりと検証してきた優れた先人たちがいる。「事前のメディアをもとめて」田村紀雄・著

akinobu oda

book

2020.05.23

「自前のメディアをもとめて」 田村紀雄 著

事前の(インディペンデント)なメディアをもとめる、という気持ち、ただただ心踊る。
何事にも、優れた先人がいて、そして、彼らの歴史をたどることは、自分たちの足元を固めることである。

本日、ホホホ座さんで、ちょいと印刷した仕事のお金を受け渡ししてもらった瞬間、店主・山下氏の目が光った。「小田さーん、こういう本が入ったんですけれど、ご存知ですか?」と。なんだか、心をくすぐるイラスト(版画?)とタイトル。その名も「事前のメディアをもとめて」。な、なんですか、こりゃ?

「いやぁ、京都にね、面白い出版社があるんですよ。出版社っていっても個人と数人の人でやっておられるのかな? SUREっていって。評論家の北沢恒彦さんっていたじゃないですか? あの人が始めて今は娘さんの街子さんがやってて。鶴見俊輔の本とか出していますよ」、えー、なんだか面白そうな人の名前が一気に並ぶ。鶴見俊輔とかベ平連とかって言葉に過剰にに反応しちゃうのは齢50を過ぎたオヤジの悪い癖だけれど、なんだかそういう感じとはちょっと違う、軽妙で懐かしいタッチのイラストが表紙を飾る、このSUREって出版社の書籍群を次から次へと出してくる店主・山下。

「表紙の絵はね、大抵、街子さんが書いておられるんですよ。いい味わいですよね」

本当にいい味わい。令和の時代とは思えぬ(今、気づいたが、令和って文字書いたの、たぶん、2回目。実際、全然覚えてなかった……礼和? 零和?)、タッチのイラスト。で、いくつか見せていただいた本の中に「手づくり雑誌の創造術」ってのも発見。おいおい、買えってことかい? 雨を見たかい? そそくさと、カウンターへ。ください……ガデム。

観ると、いくつか買ってる本もある。鶴見俊輔とか小田実とか、平野甲賀さんの本とか……たしか、これだったような気が。今や本が引っ越しのダンボールの奥に挟まって、取り出せもしないのだけれど。

で、読んでみる。ホントは仕事がたまってるのだけれど、それでも読んでみる。……面白い。なんだ、これ、知らないことばかり、というか、知らないことしか載っていない。とにかく、昭和の自主本の歴史、というか、半分以上は社会学の研究書なんだろうけれど、そんな本を手がけ、かつ綿密に調べ続けた田村氏の言葉がとにかく面白い。文中で、スタッズ・ターケルの「仕事!」の翻訳も手がけていたことを知る。自分もあの本にはとても影響を受けていて、インタビューをする際の心構えのひとつになっている(と思いたい・笑)。

まだ、全然読み進んでいないけれど、とにかく面白い。そして、こんな先人の優れた出版社(出版グループと呼んでいるようだが)が京都は伏見にあることに心をくすぐらされる。

また追ってこの読了した際に追記する予定。とにかくワクワクしてきます。何よりも「自前のメディア」=「インディペンデント・メディア」って言葉に弱いのでね(笑)。
ぜひ。